約40年前から正体不明だった「謎のガ」は、別のガのメスだった――。鳥取大学の研究グループが、そんな研究成果を発表した。論文は動物分類学の国際専門誌「Zootaxa」(電子版)に5月27日に掲載された。
「ホソバソトグロキノメイガ」は1982年刊行の日本産蛾(が)類大図鑑に初めて図示され、和名がつけられた。本州から南西諸島まで生息するが、世界共通の名称である学名は未定で、「謎のガ」とされてきた。
鳥取大農学部の中秀司(なかひでし)准教授らの研究グループは、メスの成虫に卵を産ませ、羽化した成虫を観察した。すると、ホソバソトグロキノメイガの見た目をした成虫のほか、「キボシノメイガ」という別のガの見た目をした成虫もいた。詳しく調べると、ホソバソトグロキノメイガの見た目のものはすべてメスで、キボシノメイガの見た目のものはすべてオスだった。
飼育した成虫や、野外で採集した両方のガのDNAの塩基配列を分析したところ、すべてが完全に一致した。さらに、過去の標本を調べると、ホソバソトグロキノメイガのオスとキボシノメイガのメスは見つからなかった。こうしたことから、ホソバソトグロキノメイガはキボシノメイガのメスだと結論づけた。
研究グループの中心となった松井悠樹さん(31)によると、メスとオスで生殖器以外の特徴が異なるのは、日中に活動して視覚でパートナーを選ぶチョウでは珍しくないが、夜間に活動して主に嗅覚(きゅうかく)を使うガでは極めて珍しいという。
現在は九州大大学院で昆虫学を研究している松井さんは「メスもオスも夜行性なのに、なぜこれほど見た目が異なるのか。新たな謎の研究を進められれば」と話している。(富田祥広)