特殊詐欺の被害を繰り返し防いだコンビニ店を「優秀店」として表彰する――。広島県警がこんな制度を設けている。この4年間で優秀店として認められたのは87店。被害防止で重要なのは「警察を『悪者』にすること」だという。
府中署で5月1日、「ローソンJR府中駅前店」のオーナー山根弘嗣(ひろつぐ)さん(49)に感謝状が贈られた。4万円分の電子マネーカードを求めた50代の男性客に、従業員が声をかけたところ、「パソコンの故障でカードが要る」と答えたため、不審に思い通報。事なきを得たという。
同店が被害を食い止めたのは3回目。県警は2021年から、被害を複数回防いだ店を「特殊詐欺被害抑止優秀店」として表彰しており、同店にはアクリル製の表彰盾も贈られた。山根さんは「警察が店の負担を減らす仕組みを作ってくれたのが大きい」と話す。
署によると、警官がコンビニ店などを巡回し、「1万円以上の電子マネーを購入する高齢者には声をかけて」などと従業員に要請しているという。だが、声かけのハードルは高い。買い物客に「余計なお世話だ」などと怒られるのを恐れて、ためらう従業員もいる。
そこで署では「警察を『悪者』にしてください」とアドバイスしているという。桑田光太郎・生活安全課長(46)は「お客さんに何か言われたら、『警察に言われている』と我々のせいにしてもらえれば。声かけのハードルを下げるのが大事なんです」と話す。