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自らの経験などを語るフリーアナウンサーの武田真一さん=2025年6月29日午後1時48分、鳥取県倉吉市、富田祥広撮影
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 「NHKで緊急ニュースを担当していた時は、誇りとやりがいを感じていました」

 フリーアナウンサーの武田真一さん(57)は、穏やかな表情でスポットライトを浴びていた。客席の約580人が静かに耳を傾ける。

 「でも、いつも家にいなかった。家にいてもピリピリしていた。専業主婦の妻は育児ノイローゼ気味になりました。そして、だんだん私も――」

よし、俺の出番だ

 熊本市出身。高校で友人とバンドを組み、ギターを弾いた。筑波大に進み、広告会社への就職を考えた。

 「当時、糸井重里さんなどコピーライターが話題で、私も音楽をやって詞を書いていましたので、言葉で何か伝える仕事につきたいなと」

 そんな時、NHKを受験する友人に誘われて、一緒にNHKを受けた。「志望したのはディレクター職。ところが『アナウンサーとして採用します』と言われまして。ただ、言葉で表現する仕事という意味では面白そうだなと思いました」

 熊本、松山での勤務を経て東京へ。数年後、正午のニュースの担当になった。アメリカ同時多発テロ事件、日朝首脳会談と拉致被害者の帰国、イラク戦争、新潟県中越地震……。国内外から届くニュースをスタジオから伝える日々が続いた。

 「休みの日も大きなニュースが飛び込んでくると『よし、俺の出番だ』という感じで。妻と幼い子がいる家に、いつまでも帰らない。そんな状況が7年ほど続きました」

もう嫌だ、つらい

 ところが、ある朝、ついに糸が切れた。

 交通機関で大きな事故が発生…

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