4月、インドネシアの首都ジャカルタ近郊にある「ボゴール植物園」で働いて2年になる女性職員(21)は、見慣れない光景に首をかしげた。
建物内に大勢が集まり、インドネシアの伝統衣装「バティック」とは異なる色彩鮮やかな衣服をまとった女性の姿もある。聞き慣れない言葉でスピーチをする背広姿の男性の胸元には、初老の男性2人をかたどった赤いピンバッジが光る。女性は、何げなく写真に収めた。
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それから数日後、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金日成(キムイルソン)主席のインドネシア初訪問60周年を祝う記念行事がボゴール植物園で開かれたと報じた。女性が写した写真を見ると、朝鮮半島の伝統衣装チマ・チョゴリ姿の女性や、金主席と金正日(キムジョンイル)総書記のバッジを身につけた在インドネシア北朝鮮大使館員らの姿がとらえられていた。
非同盟の「全方位外交」を掲げ、世界第4位の人口約2億8千万人を擁して堅調な経済成長で存在感を増すインドネシアと、核開発による経済制裁で孤立を深める北朝鮮。対照的にも見える両国の関係は「伝統的な友情の上に立つ」(インドネシア政府関係者)とも形容される。その原点とも言えるのが、60年前に実現した金主席のインドネシア初訪問だった。
平壌市民「スカルノ、スカルノ」
1965年4月、金主席は「…