リオデジャネイロ五輪柔道男子100キロ級銅メダリストで、全日本選手権覇者の羽賀龍之介(旭化成、33)が20日、現役引退を発表した。会見で「やり切った、という思い。自分で引き際を決められたのは幸せだった」とほほえんだ。
集大成と位置づけた東京五輪は出場を逃したが、2020年の全日本選手権で優勝。その後も2度決勝の舞台に立ち、五輪を目指さずとも存在感を発揮した。「競技人生の後半は柔道の奥深さを知ることができた」。指導者に転身し、今春にもドイツに留学する。「周りに応援される選手を育てたい」と抱負を述べた。
競技人生を支えた二つの挫折
羽賀龍之介(33)の柔道人生には、二つの挫折があった。
一つは2014年。全日本柔道連盟は、日本勢の不振が続いていた男子100キロ級で、世界選手権への選手派遣を取りやめた。世界大会で、特定の階級の派遣を見送るのは初めてだった。
選手たちの奮起を促すための「荒療治」だったが、不振の責任を一身に背負ったのが、同階級のエースとみられていた羽賀だった。
この年、ロシアで開催された世界選手権を、羽賀は研修団の一員として観戦した。
羽賀に会場で会ったとき、彼が苦笑いしながら放った自虐的な一言には、悔しさがにじみ出ていた。
「みんなが戦っているのに、俺は観客席で席取りですよ」
二度と同じ悔しさを味わいた…