旧優生保護法(1948~96年)下の強制不妊手術をめぐる訴訟で、旧法を憲法違反として国の賠償責任を認めた最高裁判決から3日で1年が経つ。国と自治体が進める被害者救済をどう見るか。全国弁護団の共同代表として、被害者を支援する仙台弁護士会の新里宏二弁護士(73)に聞いた。
――昨年7月3日を境に、被害者救済に向けて大きく動き出しました。
「被害者が長く声を上げ続け、判例を変更する最高裁判決が出ました。それからは『怒濤(どとう)の3カ月』。岸田文雄(前)総理の謝罪を受け、10月には補償法が成立しました。障害者に対する差別や偏見のもと声を上げられなかった人たちが、やっと声を上げられるようになった。そういう意味では、ようやく緒に就いたところと思います」
手術痕なくても認定の例も
――補償金の申請を弁護士が無料で支援する「サポート弁護士」の仕組みもできました。
「(2019年の)一時金支給法で認定された人や記録などで優生手術を受けたことが明らかな人は、こども家庭庁の審査会にかけられることなく認定されます。一方で、補償対象である中絶手術を受けた人などは、手術記録や手術痕がない人も多くいます。先日、兵庫県の案件で、手術痕のような客観的証拠がなくても弁護士が聞き取りして戸籍などを調べ、手術の背景を丁寧に確認したところ、認定に至った例がありました。サポートする弁護士がいて、初めて認定が可能になるケースもあると思います」
――山形県は所在の分かる対象者を担当者が直接訪問し、個別に周知に取り組んでいます。宮城県が手術を確認したのは900人いますが、一律の個別通知に踏み切っておらず、まずは一時金の認定者130人を優先して案内しました。
「いくら広報しても届かない…