米国のトランプ大統領が世界保健機関(WHO)からの脱退を表明した。なぜ脱退するのか。どんな影響があり、日本はどう向き合えばいいのか。グローバルヘルス(国際保健)に詳しい東京大の武見綾子准教授と慶応大の詫摩佳代教授に聞いた。
トランプ氏が署名した大統領令では、WHOが「新型コロナウイルスのパンデミックへの対応を誤った」ことや、「加盟国による不適切な政治的影響からの独立性を示せていない」ことなどを脱退の理由に挙げた。
武見氏は、トランプ氏には自身の新型コロナの初期対応をめぐる批判をそらす狙いもあると指摘する。
2020年1~2月、各情報機関から新型コロナに関する報告が複数回上がったとされるが、トランプ政権の反応は鈍かった。18年に国家安全保障会議のグローバルヘルスセキュリティーチームが解体され、情報の集約や対応が困難になっていたことも背景にあるという。
米国内の感染者数が増加すると、トランプ氏は中国とWHOに批判の矛先を向けた。「WHOは中国に支配されている」として、WHOからの脱退を国連に通知した。だが、このときは21年1月に就任したバイデン大統領によって撤回された。
武見氏は、再び脱退を表明することで「アメリカファーストの姿勢を象徴的に示すことができ、我々は間違っていなかったというメッセージにもなる」とみる。
トランプ氏は大統領令で、W…