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東京電力柏崎刈羽原発=2023年6月18日、新潟県柏崎市、刈羽村、朝日新聞社機から

 13年前から止まっている東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働に向け、政府や東電が準備を整えつつあり、注目を集めています。どんな原発なのでしょうか。

 Q 柏崎刈羽原発は、どんな原発?

 A 新潟県の中央付近にある柏崎市と刈羽村にまたがり、日本海に面した約420万平方メートルの土地に立つ。原子炉は全部で7基あり、いずれも、核燃料から出る熱で水を沸かして水蒸気でタービンを回して電気をつくる沸騰水型炉(BWR)。福島第一原発と同じ型式だ。発電出力の合計は821万2千キロワットで世界最大級だ。1号機は1978年12月に着工し、85年9月に営業運転を始めた。他の6基も90~97年に運転を始めた。

 2011年の福島第一原発事故の時は定期検査中などのものを除く1、5、6、7号機の4基が運転していたが、これらも順次停止し、12年3月の6号機停止で全てストップした。

 Q なぜ注目されているのか。

福島事故処理中の東電が運転目指す

 A 福島第一原発事故を起こした東電が、事故後に初めて運転しようとしている原発だからだ。事故では大量の放射性物質が出て、14年たった今年3月時点でも2万4千人以上が福島県内外に避難している。東電は溶けた核燃料の試験的な取り出しにようやく着手したばかりで、事故処理の真っ最中だ。

 Q 東電はなぜ動かしたいのか。

 A 福島の事故処理費用の想定は総額23兆円あまりとされる。このうち東電の負担は7割ほどで、それをまかなう収入を確保するためだ。東電は事故後、損害賠償や放射能で汚染された土地の除染費用がかさんで経営が危うくなり、政府が実質国有化して延命させた。国が認定した再建計画では年4500億円の利益を目標に掲げるが、近年はほど遠い。

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福島第一原発事故の処理費用の推移

 原発は1基が動くと年1千億円の収支改善効果があるとされる。火力発電の燃料費を減らせるためだ。東電が利用者から集める電気代は柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働をすでに織り込んだ額になっており、電気料金を上げずに収入を得るためには不可欠だという考えだ。

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東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の中央制御室=2025年5月15日、新潟県

厳しい審査 2017年にパス

 Q 再稼働するにはどんな手続きが必要か。

 A 原子力規制委員会の審査を受け、福島第一原発事故後にできた新しい基準を満たしていると認めてもらう必要がある。柏崎刈羽原発では、東電が13年9月に6、7号機の2基での再稼働を目指し、審査を申請した。

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全国の原発の状況

 審査の過程では「福島第一原発事故の当事者である東電に、原発を運転する適格性があるか」が重視された。そのうえで規制委は、他の電力会社より厳しい「東電スペシャル」と評されるような審査をした。6、7号機は17年12月に審査をパスした。

 Q 審査を通ったのに、動いていないのはなぜ?

 A 「地元同意」が得られていないからだ。政府は再稼働に当たって、柏崎刈羽原発のある柏崎市と刈羽村、そして新潟県の3者の同意が必要との立場をとる。柏崎市長と刈羽村長は再稼働を認める姿勢を示している。態度を明らかにしていないのは花角英世知事だけとなっている。

 Q 新潟の人たちはどう見ているのか。

 A 柏崎刈羽原発では多くの不祥事が起き、視線はとても厳しい。02年には1号機の原子炉の壁がひび割れているのを東電が隠していたのが分かり、運転を停止。07年に柏崎刈羽原発の近くを震源として起きた中越沖地震(最大震度6強)が起き、施設の中の機器が焼けたり、放射性物質が海に漏れたりするトラブルがあった。

 さらに、社員が他人のIDカードを使って施設内に入っていたことが21年に発覚し、安全への意識の甘さが批判された。規制委もこれを重く見て、運転を事実上禁止する命令を出した。命令が解除された23年12月以降も、衛星電話の故障や変圧器の火災が起きるなどトラブルは続く。

 そもそも柏崎刈羽原発が生み出す電力は首都圏に送られるだけで、地元では使われない。万が一の事故のリスクを負う新潟県民にはメリットがないとの見方も根強い。

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