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 歌手で俳優の火野正平(ひの・しょうへい)さんが14日、75歳で亡くなりました。2014年8月30日、9月6日、同13日の朝日新聞朝刊週末beに掲載した連載「逆風満帆」の3回分をアーカイブ配信します。上中下編の中編です。

【2014年9月6日朝刊 週末be】

 「うちにも猿がいます」

 NHK大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)で火野正平(65)を木下藤吉郎役に起用してもらうため、今年亡くなった当時の所属事務所社長の星野和子は、こんな売り文句でアピールしたらしい。

 星野の回顧録によれば、NHKの最終面接で「原作は読んだか?」と尋ねられた火野は、「まだ読んでいません。俺にやらせてくれるなら、今日から一生懸命読みます」と答えたという。なぜ読まないのかと問われると、「俺以外の人が演じたら悔しいから、今は読みません」。

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 駆け出し役者らしからぬ“突っ張り”ぶりで大役を射止めたものの、子役からすぐ仕事がついた火野には、本格的に演技を学んだ経験がない。明智光秀を演じた事務所の先輩、近藤正臣(72)に相談すると「役者の基本は感性や。好きなようにやれ」と言われた。自分に感性があるかはともかく、その言葉で「フッと力が抜けたのは覚えている」という。以来、「考えるより感じる」ことが芝居の原点になった。

 だが、大河ドラマでの演技が注目され始めたころ、唐突に「火野正平に隠し妻と子どもが!」と雑誌に報じられた。

「本当にあることないこと書かれたね」

 結婚を隠していたつもりはな…

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