浦崎千恵子さん(85)が10年以上書きためた日記は、青く染まっている。
「品行方正で心のきれいな子でした」。自宅の本棚に飾られた写真の中で、娘の西田敬子さんがほほえんでいる。
勉強も運動も得意な3人きょうだいの長女。叱ったことは数えるほどしかない。辛抱強く、優しかった。
敬子さんは短大を卒業し、保険会社に就職した。結婚して娘が生まれると、千恵子さんが住む兵庫県尼崎市の同じマンションに引っ越し、仕事と子育てを両立した。
共通の趣味は、絵を描くこと。日本画の教室に一緒に通い、敬子さんはネコやスズメをまるで写真のように描いた。
2人でクラシック音楽を聴くのも好きだった。感性が似ていると千恵子さんは思っていた。
旅行や花見、日ごろの買い物にも連れ立ち、同じ時間を過ごした。互いの家を行き来して食卓を囲み、たわいない話をする。そんな日常があった。
3年前の冬。敬子さんはこの日も千恵子さんの家を訪れ、千恵子さん夫婦と3人でぜんざいを食べた。
風呂に入り、自宅へ戻る敬子さんに、千恵子さんは玄関で声をかけた。「寒いから湯冷めせんように」
敬子さんは、翌日、大阪市内…