童話作家の小川未明(1882~1961)が残した「野ばら」が、絵本作家・あべ弘士さんの手で絵本になった。あべさんが「調べて、調べて、調べ上げたうえで、絵描きの本領を発揮して想像を加えて描き上げた」と力を込める作品だ。
大きな国の老兵と小さな国の青年兵士が、国境を定めた石碑をはさんで向き合っている。両者は緊張関係にあったが、次第に将棋を指すような良好な関係に変わっていく。だが両国の間で戦争が勃発すると、2人の関係にも影響が……。
世界で戦禍が絶えないいま、「野ばら」を絵本にする理由はどこにあるのか。あべさんは、出版元の金の星社から絵本化の依頼を受けて、作品を繰り返し熟読し、ある結論に達した。
「これはただ戦争反対という…