神奈川県鎌倉市のJR大船駅構内で昨年8月、東海道線の列車が線路内に倒れてきた電柱と衝突した事故で、あわや電柱が客席部を直撃するところだったことが国の運輸安全委員会が28日に公表した調査報告書で明らかになった。
事故は昨年8月5日夜に発生。乗客約1500人を乗せた小田原発横浜行きの臨時列車(15両編成)に倒れてきた電柱が衝突し、運転士1人と乗客4人の計5人が打撲などの軽傷を負った。
調査報告書で明らかになった運転士の証言などによると、走行中、2~3メートル前方に電柱が突如現れ、先頭車両前面の左脇部分に衝突した。1両目に座っていた乗客は、衝撃の際、火花が飛んできて背中に当たり、軽いやけどを負った。車内は一時白く煙ったという。
運転士や乗客が乗っていた1両目は、天井部が先につぶれて衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンと呼ばれる構造を採り入れており、報告書では、クラッシャブルゾーンが「被害軽減に一定程度寄与した可能性がある」と指摘している。
報告書によると、電柱を支える10本の鉄筋がいずれも事故後に折れており、断面がさびていたという。腐食の状況などから、このうち3本は事故発生前に折れてから「相当の時間が経過した」とし、もう1本も事故発生前には亀裂ができていたとしている。
電柱は架線を引き留めるため常に一定方向に強い力がかかる構造で、風速40メートルの風圧下では設計上の許容値を超える力がかかっていた。風や地震などの影響で電柱にひび割れが発生し、割れ目が閉じない状態が続くなかで雨水などが入ったため、鉄筋が腐食したとしている。
運輸安全委は、電柱の根本に生じたひび割れから雨水が浸入し、鉄筋が腐食したため電柱が倒れたと結論づけた。
電柱の定期検査は2022年5月に行われていたが、目視での確認だったことから、「検査で横ひび割れが発生していたが発見できなかった可能性がある」と指摘した。
JR東日本は事故後、再発防止策として折れた電柱と同様に、架線を引き留めるために一定方向に強い力がかかる構造の電柱100本を「重点管理柱」に指定。強度の高い鋼管柱への交換や補強などを今年9月までに終えているという。