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今年の春季中国地区高校野球大会の試合前練習でノックする矢上の山本翔監督=2025年6月1日、倉敷マスカットスタジアム、堀田浩一撮影
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 月に1冊以上はビジネス書を読む。コミュニケーションの取り方、人材育成、組織の動かし方……。

 今春の島根県大会を制した県立矢上高校野球部の山本翔監督(41)は「勝つ確率を高めるにはどのようなことが必要か、分かりやすく部員たちに伝えたい。そのヒント探しです」と話す。

 福岡県の公立高卒業後、2002年にドラフト5位で広島カープに入団した。しかし、1軍出場はないまま10年にプロ生活を終える。その後、指導者に転身。クラブチームでの小中学生への指導経験から、「どれだけシンプルに伝えられるかが大切」と痛感した。

 山あいの邑南町にある矢上の監督に就任したのは17年7月。当時、1年生部員だった鈴木健コーチ(23)は監督の最初のあいさつを今でも覚えている。

 「気をつけをちゃんとしよう」。鈴木コーチは「えっ、そこから」と驚いたが、監督はこう理由を続けた。「野球は『軸』のスポーツ。姿勢をきれいにすることで体のバランスがよくなる」。鈴木コーチは「野球をする以前に学んでおかなければいけないことがたくさんあることに気づかされた」と振り返る。

 「やることをやる」

 山本監督は試合前、よくこのシンプルな言葉を部員たちにかける。「ファーストプレーをしっかり」「アウト確定まで全力疾走」「バント時の声と反応」など、部員たちは監督から指導を受けた基本動作を頭の中で反復して、試合に臨む。

 上田侑士主将(3年)は「試合で負ける要因は、ひとつのエラーだったり、ひとつの走塁ミスだったり単純なこと。だから、自分たちのやることをやれば、日本一につながると思います」と話す。

 山本監督は、部員たちに腹落ちしやすいよう、矢上の人間形成に重きを置いた三つの校訓も活用する。

 校訓の「腕に覚えのある人間」は、コツコツと練習すれば技術が身につく▽「筋金の通った人間」は、芯をもって野球に取り組む▽「思いやりのある人間」は、相手の立場で物事を考えられるようになれば、翻って相手が嫌がるプレーもできる――という具合だ。

 山本監督は最近もビジネス書を購入した。成功に近づくための良い習慣づくりを指南する内容だという。

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