2021年に建てた家の前に立つ加賀美太郎さん=2024年3月2日、多鹿ちなみ撮影
  • 写真・図版

 がんと診断されて、生命保険などの選択肢が狭くなった経験を持つ人は少なくない。保険各社では近年、がんを経験した人が入れる保険を増やしている。検査技術などの進歩で早期の診断が多くなる中、先の人生に備えたいニーズの高まりに対応しようとしている。

一度の手術で狭まる、保険の選択肢

 都内に住む会社員の加賀美太郎さん(35)は、がんを発症したあと、生命保険など契約へのハードルを感じ続けてきた。

 診断されたのは、大学1年の2007年末。甲状腺乳頭がんのステージ3だった。手術で甲状腺を摘出し、放射線治療を3日間受けた。その後は転移もなく、ホルモン剤を飲む以外は通常の生活を送る。

 それでも、「再発したら」との不安が常につきまとう。その不安を軽減する手段が少ないからだ。

 がんの既往歴のため、就職した会社では新入社員向けに勧誘された生命保険に入れなかった。その後、友人に紹介された保険は、5年以内にがんになると保障額の25%しか払われないなど制限があった。それでも「葬式代くらいは残せる」と加入した。

 結婚して21年に家を建てると、今度は住宅ローン契約に必要な団体信用生命保険で、組めるものが少なかった。保障内容や金利の希望を落として組むことはできた。だが、再発に備えたくても、門前払いされているような感覚だった。

 「がんも、早く見つかれば問…

共有
Exit mobile version