2025年2月27日、完工した平壌総合病院を視察する金正恩・朝鮮労働党総書記。朝鮮中央通信が伝えた=朝鮮通信

 平壌のロシア大使館は3月25日、フェイスブックで、モスクワの医療施設で北朝鮮医師の研修を実施する方針などを明らかにしました。北朝鮮は最近、地方病院の建設にも乗り出しています。北朝鮮で神経科医師として働き、2012年1月に韓国に逃れた崔政訓(チェジョンフン)・韓国高麗大学公共政策研究所客員研究員は、薬品や電力など医療インフラが劣悪な北朝鮮には、なお解決すべき課題が多いと指摘します。

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 ――北朝鮮で医師として働いていたのですか。

 清津(チョンジン)医療大学を卒業し、清津鉄道局衛生防疫所などで働いていました。北朝鮮では医療活動に欠かせない水道や電力などが確保されていないため、検査や手術を十分に実施できません。電力が不安定なので医療機器が頻繁に故障します。病院では非常用の発電機を備えていますが、患者は運転するためのガソリンを持参しないと、手術を受けられません。

 先端技術のMRI(磁気共鳴断層撮影)やCTスキャンを行うための設備もありません。医師の知識や経験に頼らざるを得ないのが実情です。私が北朝鮮にいた当時、CTスキャン用の機器は羅先経済特区に1台、平壌に5台あるだけでした。北朝鮮当局は「人民のための社会主義」「地上の楽園」などと宣伝しますが、市民の健康など全く考えていません。

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