人目を避けた訪問を終え、去り際に上杉氏の妻と笑顔で会話する小泉進次郎氏。支持者からは、上杉氏を切った形になる小泉氏への恨み節や落選後の上杉氏一家の生活を心配する声も聞こえる=2024年10月22日午前11時11分、福島県白河市、波多野陽撮影

 衆院選での大敗の責任を取り、小泉進次郎氏は自民党の選挙対策委員長を辞職すると表明した。その時に語ったのは「政治とカネの問題に決着をつけられずに選挙に向かってしまった」。

 本当に決着をつけようとしていたのか。記者が疑問を持ったのは、選挙戦の最中、ある場所でその姿を目撃したからだ。福島3区。裏金問題で処分され、非公認になった議員が立候補を断念した後、裏金問題に関与した議員が擁立された選挙区だ。

  • 福島3区の選挙結果

岸田前首相は幹部ではない

自民党の岸田文雄前首相が、非公認となった上杉謙太郎氏(右)のためにマイクをにぎった=2024年10月22日、福島県喜多方市、波多野陽撮影

 衆院選の折り返しを過ぎた10月22日、福島県喜多方市のスーパー「リオン・ドール喜多方西店」に厳重な警備が敷かれた。駐車場で待っていた聴衆はみな、事前に金属探知機で凶器の持ち込みをチェックされていた。

 最初に、黒いワゴンから降りてきた人物が手を振った。岸田文雄前首相だ。そして、演説会の主役、上杉謙太郎氏(49)が遅れて選挙カーでやってきた。

 上杉氏は福島3区に無所属で立候補している。自民党の衆院議員だったが、裏金問題に関与し、非公認になった。その候補への支持を、岸田氏が熱く訴えた。

 「私が最も大切にしている同志だ」

 「この人を絶対に落としてはならない」

 演説を終えた岸田氏に上杉氏が頭を下げて、握手を交わした。

応援に駆けつけた岸田文雄前首相と握手する上杉謙太郎氏。背にロゴがついた自民党の上着を着て選挙を戦っている=2024年10月22日、福島県喜多方市、波多野陽撮影

 閣僚や党幹部は非公認の候補の応援には入らない。当初、自民党はそう説明していた。だが、岸田氏について、上杉氏の選対本部長を務める渡辺義信県議は「岸田前首相はもちろん閣僚ではない。党四役でもないので問題ない」と説明した。

非公認で無所属での立候補ながら、さながら自民党の公認候補。その様子を取材しました。

 はためく「自民党」ののぼり…

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