車庫で待機するとさでん交通の路面電車=2025年5月21日午前10時17分、高知市桟橋通4丁目、亀岡龍太撮影

 経営難のとさでん交通(高知市)に対し、高知県と沿線4市町が総額約12億円を支援する枠組みが決まった。うち県による約8億円はコロナ禍後に増えた債務の償還に充てる。県の担当者は「財務基盤を安定させ、人材を確保するなどして稼ぐ力を強化し、経営改善につなげたい」としている。

 県のほか、路面電車と路線バスの沿線の高知市、南国市、土佐市、いの町が支援する。公共交通の維持・確保に向けた16日の関係首長会議で合意した。

 県は、貸し切り・高速バスの収益部門に約4億円、路面電車と路線バスの公共交通部門に3億9600万円を支出。4市町は、公共交通部門への支援として、高知市の3億2千万円余りなど計約4億円を負担する。市町分の使途は未定だが、とさでん交通の路線バス廃止に伴い、行政側が代替バスを運行させる形なども想定している。

 とさでん交通は、土佐電気鉄道と県交通の債務超過を受け、県と市町村が計10億円を出資し、両社を統合して2014年に発足した。コロナ禍などに単年度の事業資金に対して支援した例を除けば、発足時以来の行政によるてこ入れとなる。

 同社の累積債務は発足当初で約37億6千万円。採算性の高い貸し切り・高速バスの収益で、公共交通部門の赤字を補い、20年3月時点で約25億1千万円まで圧縮した。しかし、コロナ後に再び悪化。昨年3月時点で約37億2千万円となっていた。

 一方、乗務員不足から路線バスや電車の減便にも直面しており、貸し切り・高速バスの運転手を路線バスに回すなどの対応も強いられていた。

 今年は、前身の2社から引き継いだ債務約21億円の償還が始まる見通し。県はこのタイミングで「良くない循環」を断ち切り、債務を圧縮できていた本来の方向性を取り戻したいとしている。

 同社は、支援により生まれた余力で、貸し切り・高速バスを新規購入したり、人材を確保したりして収益性を高める方針だ。担当者は「収益部門で成果を出すように全力で取り組みながら、公共交通部門も維持に向けて改善をはかるチャンスにしたい」と話す。

共有
Exit mobile version