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朝日歌壇

短歌時評 山崎聡子

歌壇俳壇面で月1回掲載している「短歌時評」。今月は歌人の山崎聡子さんが屋良健一郎さんや平安まだらさんの作品を取り上げ、故郷・沖縄について単純に好悪だけで語ることのできない複雑な状況を読み解きます。

 どれくらい食べれば傷を癒せるか「食べなさい(かめー)、食べなさい(かめー)」と迫る嫗(おばあ)の

 屋良健一郎『KOZA』のこの歌に立ち止まった。屋良は一九八三年、沖縄市(旧コザ市)生まれ。「KOZA」という表記は、米軍統治時代を偲(しの)ばせるとともに、そこが基地を擁する土地であることを二重写しにする。嫗が一身に負う傷は、戦争による飢えの、沖縄が体験してきた苦難の歴史の集積でもあるだろう。

 右腕に「沖縄人」と彫りてあるジョンと知り合う週末のバー

 「ナイチャーとは結婚するな…

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