なつかしい記憶には、いい思い出で肯定的な気分になるときと、つらい思い出で否定的な気分になるときがある。どちらの感情が起きやすいかは個人差があるが、肯定的な気分になる傾向が強い人は、社会とのつながりを強く感じ、将来的に自身の人生に意義と価値を見いだすことにつながると、京都大の楠見孝教授(教育認知心理学)らの研究グループが日本の成人600人を対象にした調査を分析し、国際専門誌に発表した。
青年期の「アイデンティティー」の概念を提唱したことで知られる米国の発達心理学者のエリクソン(故人)の理論では、人の生涯を8段階に分け、最終段階の老年期は「それまでの人生の意義と価値を見いだせるか(統合)」を課題としている。達成できれば、自尊心を高め、死を平静に受け入れることができるとされる。
一方、なつかしさには、家族や友人らとつながっていると認識させる「社会的結びつき」、昔の自分とつながる「自己の時間的連続性」、かけがえがなかったと見いだす「人生の意味」、ほかの人と違いどういう人間かを確かめる「自己の明確化」といった四つの機能があるとされている。
研究グループは、なつかしさ…