東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅から南東へ徒歩10分。そびえ立つスカイツリーに向かって「土手通り」を進むと、趣深い木造建築に出くわす。
右から左へと並ぶ「天」「麸」「羅」の文字。1889(明治22)年創業の老舗天丼店「土手の伊勢屋」だ。
【撮影ワンポイント】
撮影では、アングルを低くすることで店舗の存在感を強めた。また、画面にマンションや車、バイクを取り込むことで、現在と過去が交差する街の雰囲気を表現した(竹花徹朗)。
- 【特集】いいね!探訪記
店の歴史は、江戸幕府公認の遊郭として栄え、明治以降も続いた「吉原」とともにある。遊郭の出入り口だった「吉原大門」近くに、初代店主・若林儀三郎が一膳飯屋を構えたのが始まり。
昼間は、一般の労働者らに加え、吉原を利用する客で繁盛した。朝帰りの客や遊郭で働く客引きも立ち寄った。夜中は遊郭への出前も受け持ち、24時間営業だったという。
元々の屋号は「伊勢屋」。隅田川の氾濫(はんらん)から街を守る堤防「日本堤」沿いに店があり、いつしか〝土手の〟と呼ばれるようになった。
4代目店主の若林喜久雄さん(61)によると、人気メニューの一つだった天丼を専門に扱うようになったのは、明治期の終わりごろからだという。
看板といえる具材が、鮮度の…