日本オリンピック委員会(JOC)の新しい会長が、また「密室」で決まりかねない。現会長の山下泰裕氏(67)はけがで療養中。任期満了で6月に退任し、同月の理事会で新会長が選出される見込みだ。公約を掲げて会長への意欲を公言する人がいない中、日本サッカー協会前会長の田嶋幸三氏(67)、日本バスケットボール協会会長で現JOC会長代行の三屋裕子氏(66)の名が有力候補として挙がっている。
- 突然消えた「バッハ続投」、退任表明の舞台裏 混迷のIOC会長選
「複数人がビジョン掲げるのが理想」指摘も
水面下で進んでいた動きが表面化したのは、3月28日夜だった。
「JOC新会長候補にサッカー田嶋氏浮上」と共同通信が報道。読売新聞、朝日新聞も「田嶋氏、三屋氏が会長候補」などと相次いで報じた。
JOCの定款には、会長は「理事会の決議で理事の中から選定する」とある。6月の評議員会で選ばれた新理事(25~30人)が、理事会で話し合って会長を決める――というのが本来の形だ。
在任歴が浅い理事の一人は「根回しでトップが決まるのだとしたら、おかしい」と漏らす。
だが、日本スポーツ界のリーダーでもあるJOC会長はこれまでも、進んで立候補する人がいないという奇妙な慣習の中で決まってきた。
竹田恒和・前会長が退任した後の2019年6月理事会で、ある理事は「会長になる人は立候補すべきでは?」と呼びかけた。が、反応はゼロ。その後、別の理事が山下氏を推薦すると異論なく決まった。直後、山下氏が用意していた紙が配られたという。執行部人事案だった。立候補を呼びかけた当時の理事は「全くの茶番だった」。誰が、いつ、どのように新会長を調整したのか分からなかったという。
今回の改選に向けてJOCは昨年6月、「役員候補者選考委員会」を組織した。前経済同友会事務局長の岡野貞彦氏を委員長に、メンバーは7人。新理事の候補を選び、評議員会に推薦することが役割だ。ただ、複数の関係者は、JOC事務局が参加する会合で新会長も念頭に人選を進めている、と明かす。3月に開かれた選考委で「会長候補」として田嶋、三屋両氏の名が挙がったことが、報道で明らかになった格好だ。
「スポーツ界に影響力を持つ政治家らの意向が働いている」と話すJOC関係者もいる。
3月18日に東京都内であっ…