Smiley face
写真・図版
インタビューに答える田中恵美子・日本女子大教授

 あれから9年。

 障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で2016年7月26日、入居者19人の命が元職員に奪われ、職員3人を含む27人が負傷した凄惨(せいさん)な事件は、社会に大きな衝撃と不安を与えました。

 障害のある人がその人らしく暮らせる地域社会を実現し、差別や偏見をなくし、ともに生きる社会へ――。事件の教訓は生かされているでしょうか。障害の有無で「分けない」社会をめざし、地域での「じぶんぐらし」を進めるなど、事件に向き合い続けてきた田中恵美子・日本女子大教授(56)=障害学=に話を聞きました。

施設から地域へ 世界の潮流

 ――事件を起こした元職員は、「障害者は不幸しか作れない」という考えを持っていたとされています。背景には、障害のある人たちへの差別や偏見、命に優劣をつける「優生思想」があるという指摘があります。

 なぜ彼がこうした考えを持つようになったのか、深層は裁判で明らかになりませんでした。

 ただ、裁判の記録などから、施設という環境も、彼が障害者への差別や偏見を増幅させたことに何らかの影響があるのではないかと考えさせられました。

 私が、彼と同じ環境にいたら、同じような考えを持ったかもしれません。

 集団で暮らす施設では、食事や入浴、外出の時間が決められるなど様々なことが管理されがちです。限られた職員で対応しなければならない。職員も管理されているのです。

 こうした環境で、互いに幸せだと思える関係を築くのは容易なことではないはずです。

 施設を限りなくゼロにし、地域生活へと軸足を移しているのが世界の潮流です。

■望む暮らし選ぶ機会を…

共有