4年に一度開かれ、「アジア版オリンピック(五輪)」とも言われるアジア競技大会まで、あと500日足らず。愛知県内を中心に開かれ、選手団は最大1万5千人で、観客は約150万人を見込む。注目の一つが、最近の五輪では見られない競技が登場することだ。例えばカバディとセパタクロー。アジアで人気でも日本ではまだ「マイナー競技」。国内では32年ぶりの大イベントをいかして、どう関心を集め、競技人口の拡大につなげるか、関係者は知恵を絞る。
アジア版五輪で「鉄の街」→「カバディの街」?
「次はタッチの練習を」「これがステップの基本」。愛知県東海市の市立小学校の体育館。日本カバディ協会県支部長、寺岡卓朗さん(38)の声が響く。
「鉄の街」として知られる東海市はアジア大会の会場。5月には、市民による東海カバディクラブが結成された。東海3県では二つ目のクラブチームだ。
練習は毎週土曜。小中学生の部と高校生以上の部がある。公式LINEを通じて募集しているが、まだ10人程度だ。
人気のスポーツ漫画「灼熱カバディ」(小学館)で興味を持ったという中学1年の男子生徒(12)は「足が速ければ十分、戦えるのが面白い」と話す。
カバディ。相手を追い回し、捕まえる鬼ごっこにたとえられる競技。攻撃中の選手は「カバディ、カバディ」とつぶやく。インド発祥で1990年に北京アジア大会から正式種目に加わった。
同クラブでコーチを務める寺岡さんは2017年に名古屋を本拠にクラブチームを結成し、18年に県支部長となった。
日本カバディ協会事務局(東京)によると、競技人口はコロナ禍で一時減ったものの盛り返して約400人。多くは首都圏で活動しており、支部があるのは15府県にとどまる。
いわゆる「マイナー競技」だが、寺岡さんは、追い風を感じているという。「漫画のおかげもありましたが、今度はアジア大会。来年には愛知を中心に競技人口も増えていくのでは。将来、五輪に採用されればメジャー競技になる」と期待する。
支援をする東海市は、市教育委員会に「カバディ推進室」を設置。大会の宣伝と機運を盛り上げるため今年度は、前年度の5倍、500万円の関連予算を計上。漫画「灼熱カバディ」全31巻を、市内全小学校と市立中央図書館など15の公共施設にも置いた。会場の市民体育館は約2億円かけて、自動扉の設置やバリアフリー改修などを進める。担当者は「市民に競技を知ってもらい、大会期間中の盛り上げにつなげたい」と話す。
市議坂本拓也さん(54)は会場となることが決まり、「競技を経験して観戦するのでは盛り上がりが全然、違う」とクラブのサブコーチ役を買って出た。「将来、大会を見たことで選手が育ってくれれば、『鉄の街』が『カバディの街』になり、国際交流にも発展するかもしれません」と夢は膨らむ。
競技のルールなど詳しくは提供動画(https://m.youtube.com/watch?v=IoHAnNIuyac
90年代に盛り上がった「セパタクロー」 今度こそ
【動画】マレーシアで開催されたアジアカップ2025でのセパタクローの試合=竹下俊一さん提供
「もう少し広まってくれると思っていたんですが」。こう話すのは日本セパタクロー協会会長の竹下俊一さん(70)だ。
セパタクロー。「足を使ったバレーボール」と言われ、バドミントンと同じ広さのコートで、基本1チーム3人が、頭と足でボールを地面に落とさず相手コートへ打ち返し、争う競技だ。
発祥は東南アジア。日本代表…