■シリーズ「進化する薬のいま」
京都府に住む女性(49)は物心ついた頃から、アトピー性皮膚炎に悩まされてきた。
とにかく、かゆい。ひじやひざにかきこわしができ、皮膚科を受診するたびに「なんでここまでほっといたんだ」としかられた。ステロイドの塗り薬を処方され、塗るとかゆみも引くが、すぐにぶり返した。
悪化したのは、小学校高学年から。全身がかゆくて寝付けず、深夜ラジオを聞いてやりすごした。朝起きられず、中学も休みがちになった。
起きているあいだは、かいていないと、いられない。かきこわしたところから出た浸出液がかたまり、服が体にへばりついた。はがれると痛いから、家では一日パジャマを着てベッドで過ごした。起き上がると、自分が寝ていたところに、皮膚の粉がつもっていた。
できることなら服を全部脱いで、体中をかきたかった。顔は炎症で真っ赤。周囲からの視線も気になり、顔を隠すように猫背になっていた。食生活を見直したり、ステロイドが悪いのかもしれないと薬をやめてみたりしたが、治らなかった。
高校は必要な出席日数ぎりぎりで卒業。しばらく療養しながら勉強し、専門学校へ。2年通い、大学に編入した。
環境の変化が幸いしたのか、その頃になると症状も落ちついてきた。大学卒業後、民間の研究機関に就職。微生物の研究を担当した。うまくいかないこともあったが、「誰もやっていないことをさせてもらえている」という充実感があった。
だが、30歳手前で再び症状が悪化した。何が引き金になったのかはわからないが、職場が変わって通勤時間が長くなり、疲労で食事もおざなりになっていた。
かゆみに支配される生活、毎日顔をたたいた
かゆみに支配される生活が再…