衆院選に向けての党首討論に出席した石破茂首相(右)と野田佳彦・立憲民主党代表=2024年10月12日、東京都千代田区の日本記者クラブ、上田幸一撮影

記者コラム 「多事奏論」 編集委員・原真人

 安倍晋三元首相が政権を去って4年、死去から2年。時は過ぎても日本の政治はまだアベノミクスの呪縛にとらわれている。そう感じるのは「デフレ脱却」という言葉が今も自民党政権からなくならないからだ。差し迫った理由がなくとも財政バラマキと超金融緩和を正当化するために安倍氏が乱用したこのマジックワードを、石破茂首相は所信表明演説や記者会見、党首討論で何度も口にした。

 デフレは物価下落が続くことで、そこから脱却するとは物価を上げることだ。この物価高の下でさらに物価を上げようとはかなり倒錯した問題意識である。

 石破氏がこれを持ち出したのはやや意外だった。モリカケ問題で安倍政権批判が強まっていた7年前、日本記者クラブでの講演でアベノミクスや異次元金融緩和を批判していたからだ。「こんな政策をいつまでもできるわけがない」「おかしくないかと誰も言わない自民党は怖い。大東亜戦争の時がそうだった」とも。あれから変節したのか。

 石破氏がいまデフレ脱却を掲…

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