福井県沿岸で50人以上をかんだ野生イルカは、初めから福井にいたわけではない。2020年8月、能登半島の先端の石川県珠洲(すず)市に現れ、住民から「すずちゃん」と呼ばれていた。名付け親だという出村正幸さん(48)に、当時のイルカや町の様子を聞いた。
――イルカを最初に見たのはいつごろですか?
「2020年8月3日です。(珠洲市三崎町)寺家(じけ)の海沿いの道を運転していたら、知人の小泊正子さんたちが何やら立ち話をしていました。何があったのか尋ねると『あそこを見て』と海を指さすのです。見ると50メートルほど先の海面にイルカがいて、ジャンプしました。小泊さんは2~3日前からイルカがいることに気づいていたそうです」
「さらに2日後、(寺家にある)自宅前の海を眺めていたら、またイルカが見えました。海から観察しようと考え、漁師の父に頼んで船を出しました。出発して間もなくイルカが現れました。船の周りを10回連続でビョンビョン跳び回り、ようこそと言わんばかりの興奮ぶりでした」
――イルカのうわさは、どう広まったのですか?
「8月7日以降に地元紙などが写真付きで報じ、県内外から見物客が来るようになりました。イルカの御朱印ができたり、郵便局に写真が飾られたり。ある種のブームとなりました」
――名付けの経緯は?
「珍しいイルカのことを語り…