ロシアがウクライナに侵攻してから3年が過ぎました。3年間の戦いは世界の軍隊に様々な課題や教訓を与えています。自衛隊統合幕僚長を務めた折木良一元陸将は「デジタル化時代に起きた初めての戦争」としたうえで、日本と自衛隊も、新たな取り組みを急ぐ必要があると指摘します。
――ウクライナとロシアの戦いをどう見ていますか。
領土を巡って争うという基本的な戦い方は、過去の戦争とそれほど変わりません。変化したのは、戦いの場が宇宙、サイバー空間、情報、認知領域など、あらゆる場所に広がったことです。「デジタル化時代に起きた初めての戦争」と言ってもいいでしょう。
同時に、戦争空間が軍隊から民間・一般社会に広がりました。開戦当初、米スペースX社が、衛星を利用したインターネット網「スターリンク」をウクライナに提供しました。米英などが提供した情報や物資などのほか、ウクライナ国民が提供するロシア軍の位置情報などがウクライナ軍を大いに助けました。ドローン(無人機)も登場し、水上型ドローンなどがロシア黒海艦隊の旗艦モスクワを撃沈しました。
――自衛隊はデジタル化時代に対応できていますか。
2022年末に閣議決定した国家安全保障戦略など安保関連3文書は、長距離打撃能力を拡充するほか、宇宙やサイバー、ドローンなどの戦いへの対応を求めています。3文書のうち、防衛力整備計画が定めた27年度までに、こうした能力の充実を図りますが、十分とは言えません。28年度から、ドローンの大量導入など、さらなる拡充が求められます。
【連載】読み解く 世界の安保危機
ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ320人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。
――自衛隊には3年もの間…