ハーバード大ケネディ行政大学院のスティーブン・ウォルト教授=本人提供

 9日から、ロシアと対峙(たいじ)する北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が米ワシントンで始まります。ウクライナの将来的な加盟に合意して15年以上が経ちましたが、具体的な加盟の道筋は見えません。リアリスト(現実主義派)の著名な国際政治学者であるハーバード大のスティーブン・ウォルト教授は、「加盟はウクライナのためにならない」と主張しています。理由を詳しく聞きました。

 ――なぜ加盟に反対するのですか。

 ロシアが、ウクライナのNATO加盟は自国の存亡の危機につながり、加盟させないことが絶対に譲れない国益だ、と考えているからです。この姿勢は今後も変わらないでしょう。加盟にこだわればその結果、戦争が続き、ウクライナは大きな被害を受けて破綻(はたん)国家になるかもしれない。

 我々は、道徳的に誰が正しく誰が間違っているのか考えることから離れ、結果を問わねばなりません。加盟は遅かれ早かれ実現する、と米国は主張していますが、結局は戦争を長引かせ、ウクライナをさらに苦しめるだけです。

 ――NATOは2008年の首脳会議で既に、ウクライナが将来的には加盟することに合意しています。

侵攻直前にあった「機会損失」

 そもそも、当時のブッシュ(…

共有
Exit mobile version