ロシアによるウクライナ侵攻は、米国が仲介する形で、停戦・和平に向けた議論が進む。では、終戦は訪れるのか。開始前から昨秋まで3年間、駐ウクライナ大使を務め、その記録「ウクライナ戦争と外交」(時事通信出版局)を今月出版した松田邦紀さんに尋ねた。
- バチカン首脳会談、ゼレンスキー氏が我慢の末に得たものは
――ロシアのプーチン大統領が対独戦勝記念日に合わせた「72時間停戦」を宣言しました。
ウクライナは3月11日に、米国から提案を受けた「30日間の無条件全面停戦」に同意しました。ただ、ロシアは同意せず、今日に至っています。
「ロシアの戦勝記念日に合わせて72時間」というのは、「本当に真剣に、停戦や和平について考えているのか」と思わざるをえません。
戦勝パレードを落ち着いてやりたい、米国の機嫌を損ないたくない、72時間で戦闘態勢を整え直して有利な立場に立ちたい。ロシアにはそんな思惑があると考えるのが自然でしょう。
――時間稼ぎをしたとして、それはロシアに有利に働くのでしょうか。
ロシア兵は多数亡くなり、3年以上経っても大きな戦略的な目標を達成できていません。ロシアからしても、停戦・和平のプロセスに移行すべき時期にきているのではないかと考えます。
ロシアが時間稼ぎによって狙っているのは、米欧が支援に後ろ向きになることと、ウクライナ国内の厭戦(えんせん)ムードをさらに高めることでしょう。
「平行線が続くのは当然」
――両国の考えの隔たりは大きいです。
ウクライナの考えはシンプル…