「過去との決別、相違点の克服。それが関係発展のための行動指針だ」
2023年9月、ベトナムの最高指導者だった故グエン・フー・チョン共産党書記長は、首都ハノイでのバイデン米大統領(当時)との会談で、そう語った。
かつてベトナム戦争で火花を散らした米越は、終戦から半世紀近くを経て「包括的な戦略的パートナーシップ」という最上位の二国間関係を築いた。
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「ロシアによるウクライナ侵攻が、両国関係の格上げを後押しする一因になった」と、アジア経済研究所の石塚二葉研究員は語る。
それには、長い戦争を経た国としての選択の積み重ねが影響している。
「竹外交」の背景に、中国の存在
1975年4月30日、南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン)が陥落し、ベトナム戦争は終結した。第2次大戦直後に他の東南アジア諸国と肩を並べた経済は、30年におよぶ戦火で深刻な後れをとった。
さらに、78年に隣国カンボジアに侵攻したことによる国際的孤立や、中央計画経済の機能不全で、国民生活は悪化した。
エコーズ・オブ・サイゴン ベトナム戦争終結50年
南北統一を果たし、かつて敵だった米国と手を取り合ったベトナム。しかし、分断の傷痕は今も消えていません。「戦後」の行方を、現場から見つめます。
転機は86年。市場経済化を…