Smiley face
写真・図版
伊藤潤二さん=2025年9月7日午前10時13分、宮城県石巻市、成沢解語撮影

 グロテスクながら美しい作画、狂気をはらんだ奇想天外なストーリー。ホラー漫画家・伊藤潤二さん(62)の作品が、世界の注目を集めている。初の大型個展を28日まで開催中の石ノ森萬画(まんが)館(宮城県石巻市)で伊藤さんが取材に応じ、作品の意外な着想を明かした。

信じられなかった同級生の死 トカゲのしっぽ、組み合わせ

 ≪「富江」シリーズ 人々を惑わせ、破滅に導く魔性の美少女、富江を主人公とした連作。富江自身、何度も殺されるが、その都度、よみがえる。≫

 歯科技工士をやっていたとき、トカゲのしっぽみたいに、切ってもまた再生してくるアイデアを思いついたんです。それを何とかストーリーにしようという中で、人間が死ぬというのはどういうことなのかと考えた。

 中学生時代に同級生が交通事故で亡くなった。信じられなくて、どこからかひょいと顔を出しそうな妙な感覚。死んだはずなのになぜか生き返ってくるキャラクターをトカゲのしっぽと組み合わせて作っていきました。

顔から渦巻き、目がゴロゴロ… ハイライトになった1枚の絵

 ≪「うずまき」 ある女子高校生が生まれ育った「黒渦町」に、次々と起きる異変の謎を追う初の長期連載。人々や町がうずまきの呪いで変容していく様子が描かれる。≫

 私の生まれ育った家が2軒続きの長屋だったので、長屋を描くことにモチベーションがありました。考えるうちに蚊取り線香のような渦巻状の長屋を思いつき、テーマを渦巻き模様に決めました。根源的な意味があるかもしれないと思い、渦巻きの秘密を解き明かそうと描きました。

 (黒谷)あざみっていう少女が出てきて顔からうずまきになって目玉がゴロゴロしているんです。作品のハイライトになるような1枚の絵です。

日を追うごとに加速する一晩の夢 高校時代に最初のアイデア

 ≪「長い夢」 ある男性が医師に「長い夢を見て困っている」と相談した。一晩の夢が2、3日からやがて日を追うごとに、加速度的に長くなっていき……。≫

 「富江」のときに、生と死の…

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