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沖に浮かぶ浮体式洋上風力発電の風車群。右側の1基は環境省の実証事業で使われていたものを移設し、すでに稼働している=2024年11月7日、長崎県五島市、松尾一郎撮影

気候変動の話をしよう⑦ 五島市職員・三井寛之さん

 長崎県の西、五島列島南西部の島々で構成される五島市。「エネルギーの島」と銘打ち、電力使用量の63%を再生可能エネルギーでまかなう先進自治体として知られるようになりました。12年前、その基本構想をまとめる中心を担ったのが、市職員の三井寛之さん(45)。財政力に限りがあるため、再エネを一から学び、現場を歩き、自前の政策立案能力を身につけたといいます。だからこそ見えてきた、「再エネ導入より大事なこと」とは――。三井さんの〝気づき〟の過程から、考えます。

気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くシリーズです。

  • ① お天気コーナーから危機感を発信 気象キャスター井田寛子さんの覚悟

 五島市には、1990年代(当時は合併前)から陸上風力発電所が稼働するなど再エネ事業者が早くから進出していた。2010年、環境省の浮体式洋上風力発電の実証事業の海域に選ばれ、13年の運転開始を目前にしていた当時の市長が再エネ導入をまちづくりの柱にすえた。そのための「再生可能エネルギー基本構想」の策定を、三井さん所属の部署が任された。

 担当は課長以下の3人。一番下の三井さんはかつてバイオマス発電の計画立案に携わった経験があり、実務の多くを担うことになった。

 再エネ導入で先行する自治体に尋ねると、多くは構想づくりをコンサルタント会社に外注しており、委託費用の相場はおおよそ3千万円。人口3万7千人の五島市にとって、3千万円は重い。外注せずやってみるよう、上司から指示されたという。

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五島市職員として再生可能エネルギー基本構想などを担当してきた三井寛之さん=2024年11月7日、長崎県五島市、松尾一郎撮影

外注やめ、はじき出した五島のポテンシャル

 バイオマス発電の経験があるとはいえ、市全体でどの程度の再エネ発電ができるのか、データ収集やその計算、市のまちづくり政策までそろえるとなると、規模も内容も桁違いの作業だ。地元の高校を卒業後、島外に出て音楽活動をしたが、夢破れて地方公務員になったという三井さんにとって、工学的な知識を要する計算作業からして、未知の領域。同僚たちにも詳しいものはいない。そこで、市とゆかりがある大学教授らに繰り返し教えを請うた。

 そうやって見えてきた五島市のポテンシャル(エネルギー期待可採量)は、想像以上のものだった。

 「約169万4600世帯分…

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