Smiley face

 陰謀論を信じ込む自らの支持者たちによって、トランプ大統領が苦しい状況に追い込まれる――。そんな皮肉な事態がいま米政界で話題となっている。

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2025年7月16日、米ホワイトハウスで演説するトランプ大統領=ロイター

 「エプスタイン・ファイル」と呼ばれる捜査資料がその発端だ。

 数十人の未成年の少女を性的人身売買したとして資産家ジェフリー・エプスタイン氏(2019年に自殺)が起訴された事件は、これまで米国で多くの陰謀論を巻き起こしてきたことで知られる。

 ▽エプスタイン氏は少女たちを権力者に仲介しており、歴代大統領やハリウッドの大物らの名前が記された「顧客リスト」が存在する

 ▽エプスタイン氏は自殺ではなく、本当は口封じのために拘置所で殺害された

 ――といったものが代表的だ。

エプスタイン事件とは?

ジェフリー・エプスタイン氏はニューヨーク出身の資産家で、トランプ氏を含む歴代大統領らとも親交があったとされる。2000年代から性犯罪をめぐる複数の捜査を受けており、19年には未成年者の性的人身売買などの罪で逮捕、起訴された。翌月、ニューヨークの拘置所内で自殺しているのが発見された。司法省によれば、1千人超の被害者が確認されている。

 特に「MAGA(米国を再び偉大に)」と呼ばれる忠実なトランプ支持者たちは、こうした陰謀論を原動力としてきた。エリート政治に代表される「ディープステート(影の政府)」は真実を隠蔽(いんぺい)しており、トランプ氏が当選すればすべてを暴いてくれる。そんな期待感がトランプ氏を昨年の大統領選の当選に押し上げたといっても過言ではない。

 エプスタイン事件はまさに、その象徴だった。

 バイデン政権(当時)が自分…

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