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大野和士さん=堀田力丸氏撮影

 エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)の最終選考が5月26~31日に行われ、日本人2人が入賞した。最終選考の協奏曲の伴奏は、大野和士さんが指揮するブリュッセル・フィルハーモニックが担った。

 20代でアルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクールで優勝し、その経験を成長の糧にしたという大野さん。今回ファイナリストとなった4人の日本人との共演を振り返り、現代のコンクールに対する思いを語ってもらった。

  • エリザベート王妃国際音楽コン、日本勢2位・5位入賞 ピアノ部門
  • エリザベート王妃音楽コン、入賞した久末さん・亀井さんとの一問一答

 ――コンクールで協奏曲を指揮するのは初めてですか。

 2回目です。ベルギー・モネ劇場の音楽監督をやっていた時代(2002~08年)で、今回と同じエリザベート国際でした。声楽部門の最終選考を振りました。

 ――今回の最終選考に残った日本人出場者4人の演奏を振り返り、感じたことを教えてください。

 久末航さん(2位入賞)の悠然たるブラームスのテンポ感は、まさに作曲家の晩年の世界観を体現するものでした。かといって、ずっとそのままじゃなく、速いパッセージを絶妙に投げ込んでメリハリをつけてみたりして、そういうのもうまくいっていましたね。

 亀井聖矢さん(5位入賞)は、すでに舞台経験を豊富に積まれているだけあって、音にきらめきも華もあり、洒脱(しゃだつ)な表現も巧みでした。弾き方も、飛び上がっちゃうんじゃないかと思うくらいダイナミックで、お客様の反応もとても良かったようです。

 桑原志織さんは久末さんと同じブラームスの第2番を弾かれましたが、悠々とおおらかなフレーズをつくる力のある人で、甲乙つけがたいと感じました。水の中で音が揺らめきながら戻ってくるようなソナタ形式の再現部では、深い響きで他のダイナミックな部分との対比をつくり出していて、美しいと思いました。

 吉見友貴さんは最終選考の1番バッターでした。それがどういうことかというと、新作の課題曲(クリス・デフォールト作曲「Music for the Heart」)を、彼が本当の本当に世界初演をしたということなのです。精神的な重圧もさぞ大きかったことと思います。彼が弾いたプロコフィエフの協奏曲は第2楽章が変奏曲なのですが、どの変奏にも多彩なキャラクターが宿り、それがいずれも的確に特徴をとらえていて、私は本当に素晴らしかったと思いました。順番が1番でなければ、ひょっとしたらもう少し結果も違っていたのではないかと惜しまずにいられません。

 ――コンクールで指揮をする時に、特に心がけることはあるのでしょうか。

 オケの準備を入念にするということ自体はいつもと変わりませんが、複数の人が同じ自由曲を選んだ場合でも、人数分の楽譜を用意するようにします。

 今回はプロコフィエフの第3…

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