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パリ五輪の開会式でパフォーマンスを披露するアヤ・ナカムラさん=2024年7月26日、ロイター

 無数の花火の後に立ちこめた煙の向こうに、女性の人影が見えた。今思えば、その瞬間に「五輪の魔法」は始まったのかもしれない。

 7月26日、セーヌ川を舞台にしたパリ五輪の開会式でアフリカ系フランス人歌手のアヤ・ナカムラさんが登場したシーン。特派員として五輪を取材した私にとって一番強く印象に残った場面だった。

 ナカムラさんは幼い頃に西アフリカ・マリからフランスに移住し、SNS上で自作の曲を公開。世界で最も再生回数の多いフランス語の歌手になった。仏語のスラングやアフリカの現地語、英語を織り交ぜた歌詞で世界中の若者を魅了している。

 彼女は金色のワンピースを身にまとい、6人のダンサーとともに歩き始めた。出発地点はセーヌ川沿いに立つフランス学士院。大統領の保護下にある学問や芸術の最高権威とされる五つの学術機関でつくる組織で、そのうちの一つ「アカデミー・フランセーズ」は17世紀から仏語の辞書の編纂(へんさん)を使命としている。

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 学士院を出た後、ナカムラさんはルーブル美術館につながる橋の上で、自身の代表曲を歌い、共和国親衛隊の楽団と踊った。

 披露した曲の一つ「ジャジャ…

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