米トランプ政権が強める文化や芸術分野への介入に危機感が広がっている。世界的に知られてきた米国の映画や音楽などのソフトパワーの衰えにつながりかねないうえ、専門家は民主主義への影響も指摘する。

2025年3月17日、米ワシントンのケネディ・センターでポーズをとるトランプ米大統領=ロイター

 日本と米国の交流の歴史を野球を通じて描くドキュメンタリー映画「ダイヤモンド・ディプロマシー」。戦前や戦後、両国に緊張関係がある中で、米国プロチームの来日や、日本人のメジャーリーグ挑戦など、野球が日米の関係を取り持ってきたことを貴重な映像とともに紹介している。

突然の助成金停止

 監督は、1歳半のときに日本から家族で米国に渡り、サンフランシスコに暮らすユリコ・ガモウ・ローマーさん(68)だ。完成間近の今年4月、制作のために全米人文科学基金(NEH)から受けていた助成金60万ドル(約8700万円)のうち、まだ残っていた半分ほどを突然、停止された。

 届いたメールには「連邦政府の利益、特に財政上の優先事項を保護するために、あなたの助成金の即時終了は不可欠」とあった。映画の制作はほぼ終わったが、スタッフへの支払いなどが滞るおそれがあるという。

取材に応じるユリコ・ガモウ・ローマーさん=2025年5月30日、サンフランシスコ、市野塊撮影

 ローマーさんの助成金打ち切りの決定は、何の反論の機会もなく、一方的だった。理由もわからない。「映画は単なる娯楽ではなく、文化的にも大きな価値がある。(政権は)もっと敬意を持ってほしい」と訴える。

「もっと敬意を」

 トランプ大統領は1月に復権…

共有
Exit mobile version