パレスチナ自治区ガザで3月23日に救急車などが銃撃を受けて医療従事者ら15人が死亡した問題で、イスラエル軍は20日、「現場指揮官が車両を救急車だと気づかずに射撃命令を出した」とする調査結果を発表した。この指揮官を解任し、無関係な市民を殺害したことに「遺憾の意」を表明した。
調査結果によると、3月23日未明にガザ南部ラファ近郊で「テロリスト」を待ち伏せしていたイスラエル軍の部隊は、現場を通りかかった車両を相次いで3回にわたって射撃した。
部隊は最初に通りかかった車両をイスラム組織ハマスの車両とみて攻撃。その1時間後に複数の救急車が駆けつけたが、現場指揮官はこれらの車両もハマスのものと判断して射撃を命じた。この際、指揮官は「夜間の視界不良」のために車両が救急車だと認識していなかった。部隊は15分後に現場を通った国連の車両1台にも発砲した。
ネタニヤフ氏「ハマスにさらに圧力を」
調査結果は、最初と2回目の攻撃について「敵からの脅威があると誤認した」、3回目の射撃は「戦闘状況下での命令違反があった」と認定した。AFP通信などによると、これらの攻撃でパレスチナ赤新月社の救急隊員8人、ガザの民間防衛隊の隊員6人、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員1人が死亡した。イスラエル軍は、「死亡した15人のうち6人はハマスのテロリストと特定された」としている。
パレスチナ赤新月社の報道官はAFPの取材に対し、「イスラエル軍の調査結果はうそに満ちており、受け入れられない。現場指揮官の個人的なミスに責任を転嫁している」と話した。
この攻撃をめぐり、イスラエル軍は今月2日、「ヘッドライトも緊急信号もない不審車両が向かってきたため、部隊が発砲した」とする初期調査の結果を発表した。しかし、パレスチナ赤新月社は5日、死亡した救急隊員の1人が携帯電話で撮影していたという映像を公開。映像には、赤色灯などを点灯させる緊急車両が攻撃を受ける様子が残されていた。
ガザの戦闘をめぐり、イスラエル側は人質10人の解放と引き換えに45日間の停戦を提案していたとされるが、ハマスは17日の声明で受け入れを拒否し、戦争の終結とガザからのイスラエル軍の撤退を改めて要求した。イスラエルのネタニヤフ首相は19日、「ハマスへの圧力をさらに強化するよう軍に指示した。ハマスを壊滅させ、人質全員を取り戻すまで戦争を終わらせない」とする声明を発表した。