一つ食べたらのけぞるほどおいしい、たこ焼き。すかさず二つ目にようじを伸ばすも、首が後ろに伸びてしまって届かない。食べたい、でも食べてはいけない。奇妙なろくろ首と化した舞妓(まいこ)さん、いったい何に葛藤しているのか。
- 連載「美の履歴書」
画業初期にキュビスムに感化された下村良之介は、本作の舞妓も正面顔と横顔が組み合わさったキュビスム風に描いた。向かって左半分の顔がたこ焼きをどこか忌避するように横目で見るのに対し、右半分は今にも食いつかんばかりに、赤い唇を半開きにして見つめている。
下村といえば、鳥を抽象化し…