お金や不動産の管理について、信頼できる家族に託す契約を結ぶ。そんな家族信託というしくみがあります。認知症などで判断能力が低下すると管理や売却の契約が難しくなるため、備えとして近年注目されています。便利な方法ですが、注意点も数多くあります。
どんなときに使うしくみなのか、具体例で考えたい。
1人で自宅に住む80代の母と、離れて暮らす60代の子。母は高齢者施設への入所を考え始め、その資金として家の売却や賃貸も考えている。ただ、認知症などで判断能力が落ちると、不動産の契約を自ら結んだり、代わりに子が担ったりすることも難しくなる。
連載「Sundayマネー」
税金や保険のしくみ、年金制度改革、資産形成のポイント、投資や相続の落とし穴――。「Sundayマネー」では、難しくなりがちなお金の話を、消費者の視点や政策の動きなどを踏まえてわかりやすく伝えます。
そこで、母(委託者)が元気なうちに、財産管理を子(受託者)に任せる信託契約を結ぶ。不動産の名義を子(受託者)へ移し、母の判断能力が落ちた後も、子が売ったり貸したりできるようになる。
そこで得たお金は母(受益者)のために使う。母は委託者と受益者の両方の立場を兼ねる。生前贈与と違い、管理を子に任せながら、経済的な利益は母が受けられる点がポイントだ。
契約内容は、弁護士や司法書…