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金融教育家・作家の田内学さん

 「貯蓄から投資へ」といわれるなか、今年1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、新たに投資の世界に足を踏み入れた人も多いはずです。世界的な金融大手ゴールドマン・サックス証券の元ディーラーで、社会的金融教育家として活動する作家の田内学さんは「簡単にお金を増やす方法はない」と語り、「社会のあり方」に目を配る大切さを呼びかけます。どういうことでしょうか。

朝日地球会議2024

田内学さんは、朝日地球会議2024に出演します。田内さんが、投資の本当の意味やお金に振り回されずに生きるヒントを、金融・経済アナリストの横川楓さんと考える「新NISA時代のサバイバル術 資産運用立国のリアル」が10月28日に配信されます。

 ――現在の新NISAブームをどうみますか。

 「年金だけでは足りないから、自分たちで増やさないといけないという前提で、NISAは始まりました。賃金が伸びないのだから配当による収入があった方がいい、というのは個人レベルでは正しいでしょう。ただ、全体の問題は解決しない。年金問題の根本は少子化にあります。将来、15歳以上65歳未満の生産年齢人口は大きく落ち込みます。今は女性の労働参加が増えていることで維持できていますが、それもやがて限界がくる。働く人が減れば生産される物やサービスは足りなくなる。みんながお金をためたところで、インフレが起きて全体には行きわたりません。介護や教育現場など、すでに様々な分野で人手不足は起きています。根本的な解決のためには、少子化をどうするのか、生産性をどう上げるのか、考えないといけません」

 ――政府や証券会社は新NISAでの長期投資をすすめています。

 「今の社会保障制度ではもう国民全員を守り切れないので、自己責任による資産運用で国民に納得してもらおうとNISAが拡充されました。ただ、全体の問題を少しでも改善するには、投資されたお金が有効に使われて、生産性を上げないといけない。将来、働く人の割合が減っても、社会が回るようにしておく必要があるんです」

 ――新NISAを始めたいと相談を受けたら田内さんはすすめますか。

 「世代や状況によって違いま…

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