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まだ収穫されていない畑と終わった畑がパッチワークのように広がる=沖縄県南大東村

 残業時間の罰則付き上限規制が、4月から沖縄県と鹿児島・南西諸島の砂糖製造業にもかかるようになります。自動車運転、建設業、医療と同じように5年間の猶予がありました。サトウキビの収穫期に仕事が集中し、離島が多くて人材確保が難しいことが考慮されたためです。砂糖製造業の「働き方改革」はどうなっているのか。収穫期まっただ中の2月下旬、南大東島をたずねました。(編集委員・沢路毅彦)

 沖縄・那覇空港から50人乗りのプロペラ機で東に約1時間。南大東島空港から島の中心部に車を走らせると、「きびは島を守り島は国土を守る」と書かれた煙突が見えてきた。南大東島唯一の製糖工場、大東糖業のシンボルだ。

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大東糖業の製糖工場の煙突。修繕中で「さとう」の文字が消えている=沖縄県南大東村

 南大東島は沖縄本島から離れ、断崖に囲まれていて長く無人島だった。本格的な開発が始まったのは明治時代になってから。八丈島から移った人々が島の基幹産業に育てたのが、サトウキビ栽培と砂糖の生産だった。

 南北の大東島は長く私有地として製糖会社の管理下にあり、戦後の米国統治下になって村制がしかれた。

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南大東島と北大東島

 サトウキビは、12月後半から翌3月に収穫期を迎える。糖度が一番高くなる時期だからだ。収穫すると糖度が落ち始めるため、粗糖といわれる段階まで一気に加工しなければならない。収穫期は製糖期でもある。

昼夜交代から3交代に

 大東糖業は1950年設立。製糖期の工場には、サトウキビを収穫したトラックがひっきりなしにやってくる。

 ゴミを除いた後、圧搾機で汁を搾りとる。さらに不純物を取り除き、水分を蒸発させて結晶にする。こうして粗糖(原料糖)を作り、本土の精製糖工場に送る。収穫が続いている限り、製糖期の工場は24時間、休み無く動く。

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大東糖業で作られた粗糖(原料糖)=沖縄県南大東村

 そこに2024年度から「働き方改革」の波が押し寄せる。残業時間は繁忙期を含めても年720時間。休日労働を含めて1カ月100時間未満に収めなければならない。

 大東糖業の工場は昨年まで昼…

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