2025年4月30日、ダマスカス郊外に展開される暫定政権の治安部隊の隊員ら=AP

 在英NGOのシリア人権監視団(SOHR)は30日、シリアの首都ダマスカス郊外などで、イスラム教スンニ派が主導する暫定政権の治安部隊などと少数派であるイスラム教ドルーズ派の武装勢力などの間で衝突が発生し、計47人が死亡したと発表した。シリアでは宗派間の争いが相次いでおり、緊張が高まっている。

 SOHRによると、衝突は28日から30日にかけ、ダマスカス郊外などの複数の地区で発生。きっかけは、ドルーズ派の人物がイスラム教の預言者ムハンマドを批判したとする音声がSNSで拡散したことだとされる。SOHRによると、一連の衝突により暫定政権側で26人、ドルーズ派側で21人が死亡したという。

 一方、昨年12月のアサド政権の崩壊以降、シリアでの軍事行動を拡大しているイスラエル軍は30日、「ドルーズ派の民間人を攻撃した」として、ダマスカス郊外で「工作員」への空爆を実施したと発表した。シリア国営通信(SANA)によると、イスラエルの攻撃により、暫定政権の治安部隊員1人が死亡したという。

 シリアでは3月上旬、西部ラタキアなどで治安部隊などがアラウィ派の民間人らを殺害したとされ、国民の融和が課題となっている。1967年の第3次中東戦争でシリアから占領したゴラン高原などでドルーズ派住民を抱えるイスラエルは「シリアにおける同胞の保護」を掲げ、暫定政権への牽制(けんせい)を強めている。

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