スーツ姿で戦うゴジュウジャーの5人©テレビ朝日・東映AG・東映

 東映のスーパー戦隊シリーズは今年4月で放送開始から50周年を迎えた。2月から放送中の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」は、正義と悪の境界があいまいに見えるユニークな戦隊だ。「正義のために悪と戦うヒーロー」というイメージがあるものの、実は、戦隊のヒーロー像は社会状況を映すように変化してきたという。

 正義がますます不確かなこの時代。戦隊が描く善悪や正義について、東映でゴジュウジャーを手がける松浦大悟チーフプロデューサー(28)と、戦隊はじめ特撮作品の制作に長く携わってきた白倉伸一郎・上席執行役員(59)に聞いた。(敬称略)

「ヒーローと悪」ではなくライバル?

 ――「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」では、戦隊ヒーローの5人と、悪の集団「ブライダン」が、はっきりとした善悪の関係に見えません。主人公・遠野吠(ほえる)(冬野心央)と敵役のファイヤキャンドル(三本木大輔)の関係も、「善と悪」というより、少年マンガのライバルのように戦います。

 松浦 戦う理由を作らなければいけないので、悪役側も街を壊したり人を傷つけたりは一応しています。しかし、めちゃくちゃな悪人には見えないかもしれません。吠もファイヤキャンドルも、「ヒーロー」と「悪」という「記号」ではなくて、同じように人間だよねという描き方を意識しています。見ている人が「この人だったらこういうことをしてしまうよね」と思うようなキャラクターですね。

 ヒーロー側もそんなにヒーローとして描いていない。あえて仮面ライダーシリーズとの対比で言うと、仮面ライダーが陰だとすればスーパー戦隊は陽。とにかく明るく、何かを肯定する力が強いシリーズだと、ゴジュウジャーの企画立ち上げ時に考えていました。どうせなら、悪いやつとは言わないまでも、ろくでもないやつまで含めて肯定して見せちゃおうという思いがありました。ゴジュウジャーの5人も何となくずるいところや汚いところもある。結果として、「あれ、悪役の方がヒーローっぽい?」なんてことにならないといいですが。

東映の松浦大悟チーフプロデューサー(右)と白倉伸一郎・上席執行役員。「5」と「0」でゴジュウジャーポーズ

初代の戦隊シリーズ「秘密戦隊ゴレンジャー」の放送から50年。スーパー戦隊は、時代に応じた正義と善悪を届けてきました。現在テレビ朝日系で放送中の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」では、悪を倒すためではなく指輪争奪戦でナンバーワンになるために戦隊ヒーローたちが戦います。正義なのかあいまいなヒーローは、何のために戦う?そもそも戦隊の歴史は「勧善懲悪」ではない?東映の制作陣が解説します。

 ――ゴジュウジャーは「正義のため」ではなく自分のために戦います。戦隊戦士に変身する力を得られる「センタイリング」をめぐる指輪争奪戦に勝って、自分の願いをかなえることが目的です。自国ファーストの大統領や、大義が見えない各地の紛争。「正義」という言葉が空虚な時代に象徴的です。

 松浦 基本的に「正義」のた…

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