埼玉スタジアムや最高裁判所など大型のハコモノを作るゼネコンが、幅40センチの高性能スピーカーを開発した。似つかわしくない家庭向け商品が生まれたのは、1人の社員が埋もれていた技術に光を当てたのがきっかけだった。
立体的に音を再現
日本を代表する建設メーカー・鹿島が開発したスピーカーは「OPSODIS 1」。左右のスピーカーが出す音の周波数を微妙にずらすことで、ヘッドホンのように、左右の耳に違う音を届けることができる。そのおかげで、左右や後ろからも音が聞こえてくるような、立体的で高い臨場感を味わえるのだという。
鹿島がこうした技術を持つのは、音楽ホールを建設する際、音の響きをシミュレーションするからだ。例えば「3階右端の席」の音は実際、どう響くのか、完成まで分からない。そこで、子会社の「鹿島技術研究所」が1996年、完成前のホールの各席で、どんな音が聞こえるのか、再現できる技術を英国の研究機関と発明。社内で試聴会も開かれたという。
ただ、この技術は他社製品の一部で採用されたものの、その後は関係者以外には知られず、長く埋もれたままだったという。
それから20年ほどたった後…