日本大学は26日、元理事長の田中英寿氏(今年1月に死去)が関係したものも含め、大学運営の不適切な案件を検証するため学内に設置した特別調査委員会の最終報告書の要旨をホームページで公表した。

 田中氏は理事長在職中の2021年11月、日大板橋病院(東京)を巡る背任事件に関連して所得税法違反(脱税)容疑で逮捕され、後に有罪判決が確定。大学は22年8月に特別調査委を設置し、ほかの不正の洗い出しを進めていた。

 公表された要旨では、物品調達などに関する計14案件を取りあげ、その一つとして、田中氏への薬の処方について言及。板橋病院の電子カルテに診療記録はないのに処方箋(せん)の作成記録はあったとし、診療なしで処方箋を出していれば医師法違反の疑いがあると指摘した。捜査機関に情報提供したという。

 そのほか、大学運営の全般にかかわる事案としてタクシー券のずさんな管理も指摘した。09年度から21年度に1万5955枚のタクシー券を大学内外の関係者に渡していたが、その必要性などを「必ずしも厳密に確認・検証していなかった」と問題視した。

 弁護士と公認会計士の3人で構成する特別委は今年2月2日に最終報告をまとめた。公表までに3カ月近くかかったことについて大学側は、要旨とともに今回公表した解説文書の作成などに時間を要したため、などと説明した。

 日大側は23年、背任事件で大学に損害を与えたとして、田中氏ら5人と3法人に計約11億円あまりの損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。

 日大は20年度、私立大で2番目に多い約90億円の私学助成を受けていたが、事件を受けて21年度以降は助成が全額カットされている。(久永隆一)

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