一度は野生下で絶滅した国の特別天然記念物「トキ」を、石川県の能登地域で放鳥する計画が進む。来年度にも実施される放鳥に向け、環境省の専門家会議「トキ野生復帰検討会」の座長を務める山階鳥類研究所の尾崎清明副所長(74)が19日、初めて能登を視察した。
「専門家会議は紙の上だけ。データはあるが、私は私なりに(自分の目で)能登を見たい」。尾崎さんがこの日視察したのは、能登に12カ所設置された「モデル地区」のうち、羽咋市南潟地区、中能登町春木地区、七尾市高階地区、相馬地区、釶打(なたうち)地区、志賀町尊保(そんぼ)地区の計6カ所。モデル地区は県や能登4市5町などからなる能登地域トキ放鳥受入推進協議会が、餌場づくりに取り組む場所として設置したものだ。
尾崎さんの視察には、能登のトキの歴史を知り尽くす「生き字引」の男性も付き添った。かつて野生のトキを観察し、本州で最後の1羽まで諦めず保護に取り組んだ村本義雄さん(100)。県の「トキスーパーバイザー」も務める村本さんは「(放鳥まで早くて)あと1年ですからね。餌がなければ、トキは飛んでいってしまいます」と語った。
見えた課題「農家の協力必要」
首から双眼鏡を下げた尾崎さ…