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賃金

 都道府県ごとにすべての労働者に適用される最低賃金とは別の「特定最低賃金」を使って、介護分野など低賃金で働く労働者の処遇改善を目指すアイデアが国会などで取りざたされている。実現にはハードルも指摘されるが、特定最賃とはどのような仕組みで、活用案が浮上する背景には何があるのか。

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 議論の発端は3月17日の参院予算委。国民民主党の田村麻美氏が石破茂首相にこう提案した。「介護などのケア労働は人手不足状態。特定最賃を活用して賃上げと労働移動を実現する道筋をつければいい」

 これに対し、首相は「賃金が上がっていかないと、この国の経済は持たない。制度が趣旨を果たしているか、政治主導できちんと判断したい」と前向きな姿勢を示した。

 特定最賃とは、鉄鋼や紡績といった産業別に定める最低賃金で「地域別最低賃金」よりも高い金額に設定される。元をたどると低賃金労働者の参入を防ぎ、地域産業を振興するという側面があり、大分県では地域別最賃が954円なのに対し、鉄鋼業の特定最賃は1106円だ。

 近年、介護分野などでは人手不足が深刻で、処遇改善が急務。特定最賃を適用すれば、高い賃金水準と人材確保が可能となり、成長産業へ移行できる、というのが田村氏の提案の趣旨で、赤沢亮正経済再生相も「利用可能な一つの有力なツール」と踏み込んだ。

 与党側も翌18日、自公幹事長間で介護分野などに特定最賃の適用を検討することで一致。福岡資麿厚生労働相も21日、検討を進める考えを表明した。素早い動きには、少数与党国会において協力を仰ぎたい国民側への配慮も見え隠れするが、経済界にも活用を求める声があり、経済同友会の新浪剛史代表幹事は同21日の会見でエッセンシャルワーカーに対する特定最賃を「早々に設定して欲しい」と語った。

労使合意の高いハードル  「制度は破綻」の声も

 議論が活発化する特定最賃の…

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