中島京子 お茶うけに
「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。
庭にトマトが育っている。
このエッセイをみなさんが読まれるころには、たくさんの青い実がついているのではないかと期待しているのだけれども、さて、どうなることやら。なぜトマトを育て始めたかというと。
ある日、家に帰ってくると、我が家の写真を撮っている二人の人物に出くわした。「スワ、不審者!」と警戒して、できる限りイカツい表情を作って「ナンデスカ」と問い詰めたところ、それは自治体の耐震改修担当の方々だった。通学路に面したうちのブロック塀が古くて危険だと、市民から通報があったのだという。

家のリフォームをしたばかりで、お金もないし。とは思ったが、うちの前を元気に通学・通園する小学生や幼稚園児に、地震で倒壊したブロック塀が襲い掛かることを考えると、改修せざるを得まいとも思う。助成金も、少し出るという。それで思い切ってブロック塀を撤去し、外構を新しくしたのが去年の暮れだった。
壁だけなんとかすればいいの…