米国で第2次トランプ政権が先々週、誕生しました。トランプ米大統領自身、大統領選で対中批判を繰り返し、政権中枢にも、対中強硬姿勢で知られるマイケル・ウォルツ氏を大統領補佐官(国家安全保障担当)に、マルコ・ルビオ氏を国務長官に据えるなど「対中強硬の政権」といった印象をお持ちの方も多いと思います。
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確かに「トランプ2.0」も、対中強硬路線であることは間違いないでしょう。ただ、第1次トランプ政権の立ち上がりをワシントン特派員として取材していた私から見ると、対中強硬のアクセルの踏み具合が、当時よりやや弱い印象を受けています。
2016年11月の前々回大統領選で当選したトランプ氏は、就任前の同年12月、正式な外交関係のない台湾の当時の蔡英文総統と電話会談。1979年の断交以来続いてきた台湾総統と直接接触しないという外交上の慣例を破ったことに、中国は猛反発しました。
大統領就任間もない翌17年4月には、フロリダでの初の習近平(シーチンピン)国家主席との米中首脳会談のさなか、シリアの空軍基地への攻撃を指示。地中海に展開する米艦艇から巡航ミサイル・トマホークで攻撃したことを、会食を共にする習氏に伝えました。わざわざ習氏の面前で「見せしめ」的な軍事行動を演出したのも、米国の軍事力を誇示し、中国牽制(けんせい)の意図があったからでしょう。
昨年の大統領選でトランプ氏…