2019年6月29日、大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて会談した米国のトランプ大統領(左、当時)と中国の習近平国家主席=ロイター

 トランプ米大統領は9日、世界各国を対象に発動したばかりの相互関税の一部を90日間、一時停止すると発表しました。同時に中国への関税を145%としました。中国の対抗姿勢の背景や関税による経済への影響などについて、防衛研究所の飯田将史理論研究部長に聞きました。

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 ――トランプ政権の高関税政策に対し、中国は一時、「最後まで付き合う」と表明するなど、徹底して対抗する方針を示してきました。

 中国が強気な姿勢をとる背景には大きく二つの事情があったと思います。中国は9日までの段階では、「トランプ氏は全世界を敵に回して貿易戦争を繰り広げている。グローバルサウス諸国や先進国も巻き込んでいるので、各国と連携すれば米国を追い込める。しばらく、がまんすれば米国が妥協する」と考えていたようです。

 もう一つは、国内的要素です。中国経済は停滞しています。中国軍の人事を巡る不満もあるようです。一般市民や軍、中国共産党の中に習近平(シーチンピン)国家主席体制への不満や反感が広まりつつあると思います。習政権として、ナショナリズムをあおって求心力を回復したい思惑があったのでしょう。

 しかし、主なターゲットを中国に絞ったトランプ氏の9日の発言で、最初の事情が大きく変わりました。中国ははしごを外された状況で相当焦っていると思います。中国内からは、トランプ氏が最初からこうした構図を狙っていたのではないかと疑う声も出るかもしれません。

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